便潜血陽性

便潜血陽性の方へ

便潜血検査は、健康診断の際、前もって渡された採集キットを使って便のサンプルを採集していただき、目に見えない程の出血が便に混じっていないかどうかを調べる、いわゆる検便検査で、大腸がんのスクリーニングとして行われるものです。
実際に便潜血が陽性になる人の割合は100人が検査を受けると10~15人程度です。陽性になった原因を調べるとほとんどが痔ですが、陽性の人の30%程度に大腸ポリープが見つかり、2~4%は大腸がんが見つかるという報告があります。
一見、この数値は低いのではないかと思われがちですが、便潜血検査陽性は食道から肛門までの食物の通る道のどこかで出血があったということですから、健康診断前に2回便を採集する2回法のうち1度でも陽性であれば、精密検査を受けることが大切です。
実際に、便潜血検査陽性がきっかけとなって、精密検査を受けて大腸がんが見つかった人の多くは体の負担が少ない内視鏡で治療できる早期の病変であったという報告もあります。便潜血検査が陽性になったら必ず精密検査を受けてください。

便潜血検査で陽性となった場合

便潜血検査で陽性になったということは、食道から長い消化管を経て、肛門までのどこかで出血があったということです。
そのため、どこで何が原因となって出血が起こっているかを突き止める必要があります。そのための検査としては、X線による検査、大腸カメラ検査などがあります。

造影剤を使ったX線検査

造影剤を使ってX線による腸の画像検査を行う方法です。しかし、大腸は大きく曲がっている上に、内部もシワやヒダが多く、どうしてもX線では見逃しの可能性があります。また異常を発見した時には、病理検査などのための組織採取を行う必要があり、再度大腸カメラ検査が必要になってしまいます。

大腸カメラ検査は早期大腸
がんを発見可能な唯一の検査

大腸カメラ検査は、先端にカメラと照明、処置用の鉗子などがついた細いスコープを肛門から挿入し、直腸から小腸との結合部までの大腸全体の粘膜を、医師がリアルタイムに観察することができます。早期の大腸がんや前がん病変の大腸ポリープを発見することのできる唯一の検査です。
その上、疑わしい病変を見つけたら、処置用の鉗子でサンプルを採取して病理検査を行うことで確定診断に導き、前がん病変の大腸ポリープを見つけたら、その場で切除する日帰り手術を行い将来のがん化を予防、出血があったら止血処置をすることなどが可能です。
つまり、大腸カメラはたった1日で、検査、診断、治療、予防が可能な有益な検査となります。当院では、内視鏡専門医・指導医の資格を持つ臨床経験の豊富な医師が、最新で最上位の内視鏡システムを駆使して、丁寧でありながら迅速かつ正確な検査で、患者様の負担を可能な限り軽減した検査を行っております。また、以前の検査がつらかった方や検査に対する不安が強いという方には、鎮静剤を使ってウトウトと眠っているような状態で検査を受けていただくことが可能ですので、遠慮なくご相談ください。

大腸カメラ検査

大腸カメラ検査は、曲がりくねっている上に、内部にシワやヒダが多い大腸の内部を、見落としがないように気体を送り込んだり、大きく曲がった部分を通過したりするためにどうしても圧迫感などを感じることがあります。また、腸に負担がかかることで強い痛みが出たり、時には奥まで到達することが困難であったりと、医師の技量によっても患者様の苦痛の度合いに大きな違いがあることも事実です。
当院では、日本消化器内視鏡学会が認定する内視鏡専門医・指導医である医師が、すべての内視鏡検査を行います。国内外で内視鏡の診断・治療、技術指導などを数多く経験してきた熟練の手技で内視鏡検査を行うことで、迅速かつ患者様のお体に負担のない検査で、正確な診断や治療が可能となります。

早期大腸がんや前がん病変のポリープは検査中の切除が
可能

検査中に前がん病変である大腸ポリープ(腺腫)や早期の大腸がんを見つけた場合は、その場で日帰り手術として切除することが可能です。大腸がんは早期のうちなら、この内視鏡による切除だけでほとんどのケースで完治できます。
また、大腸ポリープは放置して大きくなってしまうとがん化のリスクが高まってしまうため、切除しておくことで将来のがん化の予防に繋がります。 大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんど無いため、気づかないうちに進行させてしまうと、大変な手術が必要となり、最悪の場合は命に危険が及ぶこともあります。
しかしながら、症状の無い早期がんや前がん病変である大腸ポリープを小さなうちに発見できれば、体に負担が少ない治療(内視鏡治療)で根治させることが可能です。当院では、日帰りで大腸ポリープの切除も行えますので、忙しい方でも1日スケジュールを確保するだけで、検査から治療、そして大腸がんの予防まで一度に行うことができます。

便潜血検査陽性は早期発見に
繋がるきっかけ

便潜血検査が陽性だった場合の疾患として一番多いのは痔ですが、だからといって精密検査を受けなくていいということにはなりません。また、再検査となって、もう一度便潜血検査を受けた時に陰性だったからといって、精密検査を受けなくていいことにはなりません。なぜなら、一度でも出血があったという事実が残るからです。
しかし、便潜血検査が陽性になった人の中で、しっかりと精密検査を受ける人が実は50%程度しかいないという報告もあります。便潜血検査が陽性だったからといって必ずしも大腸がんや前がん病変である大腸ポリープがあるとは限らないですが、大切なのはそのことをしっかりと確かめることです。精密検査の結果、やはり痔の出血だったとわかれば、痔の治療をしっかりと行えば良いだけです。
逆に大腸ポリープや早期がんが見つかれば、その段階で体に負担の少ない治療(内視鏡治療)で完治できるというメリットもあります。 つまり便潜血検査自体、大腸がんのスクリーニング検査としてはさほど精度が高くないかもしれませんが、自分の腸の状態についてしっかりと見つめ直すための精密検査のきっかけなのです。その点を理解して便潜血検査が陽性だった場合は、早いうちに精密検査、特に大腸カメラ検査を受けるようにしましょう。

便潜血検査陰性の方へ

大腸がんは、表面が出血しやすい状態になっており、硬い便が通る道に大腸がんができると、擦れて出血することがあります。また大腸ポリープも同様なのですが、大腸は平均1.6m程度の長さがあり、その中をゆっくりと水分を吸収されながら便が進んできます。そのため、まだ水分の吸収されていない、柔らかい便が通る場所にがんやポリープができていたら、まず出血することはありません。
進行がんでも出血がほとんど見られない場合も実は珍しくないのです。実際に検診の便潜血検査では、早期がんの半数、進行がんでも8割ほどしか見つからないと言われています。そのため、たとえ便潜血検査が陰性であっても、大腸ポリープの発症リスクが高まる40歳を過ぎたあたりから、定期的に大腸カメラ検査を受けることが推奨されています。

お問い合わせ

便潜血検査は便への血液の混入の有無を確認する検査です。便潜血検査は微量な血液の混入も確認することができるため、大腸がんの早期発見に有効な検査と言われています。便潜血検査は専用のキットで便を採取するだけと非常に簡単な検査で、名古屋市が行っている大腸がん検診でも採用されています。名古屋市の大腸がん検診受診の対象年齢となり、ご案内が届いた方は欠かさずに受けて頂きたく思います。
万が一ですが、便潜血検査で陽性(便潜血陽性)と指摘された方は、大腸がんが原因で出血している可能性もありますので、お早めに大腸カメラ検査を専門的に行っているクリニックまでご相談をお願い致します。


監修:名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院 
院長 村元喬

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