胃痙攣

胃痙攣とは

胃は食物を消化する表面側から、大まかに分けると粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜という層構造になっています。
胃痙攣は、この固有筋層が何らかの理由で過度に緊張することで、まるで痙攣しているかのように感じ、傷み、悪心(吐き気)・嘔吐などの症状が現れます。胃痙攣を起こしている疾患などの原因によって、治療法はそれぞれ異なってきます。

胃痙攣の原因

胃痙攣は、主に胃そのものの疾患から起こるもの、胃以外の消化管・消化器の疾患によって起こるもの、心因的な原因によって起こるものに分けることができます。このうち、胃の疾患によって起こる場合は、慢性胃炎、胃潰瘍、胃アニサキス症、胃がんなどが原因です。
また、胃以外の消化器・消化管の疾患で起こる場合は、膵炎、虫垂炎、胃腸炎、胆のう炎、胆管炎などが原因です。心因的な原因によって起こる場合は、ストレス性のものや過度の緊張によるものなどが原因です。
これらの疾患のうち、すぐに受診が必要な重篤なものとしては、膵炎や胆のう炎、胆管炎があります。膵炎では胃痙攣の症状の他に、心窩部(みぞおち)や背中などに痛みを感じ、発熱などの症状もあります。
また胆のう炎、胆管炎では進行すると共に、右季肋部(右の肋骨の一番下)周辺に激しい痛みがあり、高熱を発します。また、注意しなければいけないのは、胃がんの症状として胃痙攣が起こっているケースです。
胃がんは初期にはほとんど自覚症状がなく、また少し進行して症状が現れるようになっても、他の胃疾患と同じような症状が多いため、見逃してしまうことがあります。胃に不調を感じたらできるだけ早めに消化器内科を受診してください。

胃痙攣の検査

腹部超音波検査(エコー)

胃痙攣の原因となっている疾患が、消化管以外の膵臓、胆のう、胆管などの消化器が原因かどうか、腹水などが溜まっていないかなど腹腔内の状態を調べる検査です。検査する部位に医療用のジェル(潤滑剤)を塗って、プローブと呼ばれる超音波の発受信器をあてるだけで全く痛みはありません。

胃カメラ検査

原因が食道から胃、十二指腸までの上部消化管にあると思われる際には、胃カメラ検査を行います。胃カメラ検査は上部消化管の粘膜全体を医師が観察して、炎症や潰瘍などの病変がないか、アニサキスに寄生されていないかなどをリアルタイムに調べることができます。
アニサキスを見つけたらその場でスコープの先についている鉗子により摘出治療が可能です。また胃潰瘍などで出血がある時は止血処理もできます。また疑わしい病変を発見した場合は、組織のサンプルを採取して病理検査から確定診断に導くことも可能です。
胃カメラ検査は胃の中に食物があると正確な検査ができませんので、症状のある方は少なくとも食後8時間以上を経てご来院ください。

胃痙攣の治療

対症療法では主に薬物療法を行います。同時にそれぞれの原因疾患に合わせて治療を行っていきます。

対症療法

胃の筋肉の緊張を抑えるため、消化管の運動を抑えるブスコパン®︎やストロカイン®︎、漢方薬などを処方します。ブスコパン®︎などは市販薬としても販売していますが、胃痙攣は自己判断で治療してしまうと、かえって悪化することがあります。まずは消化器内科などを受診してしっかりと治療しましょう。
なお、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの場合、対症療法のみで治療が完了することもあります。

原因に合わせた治療法

検査によって原因疾患が明らかになった場合、それぞれに合わせた治療を行います。主な疾患については、以下の通りです。

原因疾患 治療法
胃アニサキス症 胃カメラの鉗子でアニサキスを摘出します。
胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍 胃酸の分泌を抑制する薬、粘膜を修復する薬などを処方します。
胃がん

早期には内視鏡のみで完治が見込めます。進行がんの場合は手術や化学療法、放射線療法などを病期に合わせて検討していきます。

機能性ディスペプシア 保険適用の消化管運動促進薬であるアコチアミドを基本として胃酸の分泌抑制する薬などの薬物療法と、ストレスの緩和など生活習慣の改善を行います
胆石症 胆石を溶けやすくする薬の内服、または胆嚢摘出手術を行います。


監修:名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院 
院長 村元喬

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