胃がん

胃がんとは

胃がんは、胃の粘膜表層にできるがんで、そのほとんどは腺がんに属します。腺がんはさらに細胞の形が粘膜の構造を残して固まってできる分化型のがんと、粘膜の構造を全く残しておらずばらばらにできる未分化型に分けられます。分化型のがんは比較的進行がゆっくりしていますが、未分化型の中でスキルス胃がんといわれるタイプのがんは進行が速く、若年層にも発症しやすいがんですので注意が必要です。
胃がんはかつて、日本人のがんの中では常に1位を占めていました。そのため研究も進み、がんの性質や治療法などが確立されてきており、現在は減少傾向にあります。それでも早期には自覚症状がほとんど無いことから、気づかずに進行させてしまうケースもあり、定期的な胃カメラ検査などによる早期発見が大切です。

胃がんの原因

日本では胃がんの原因はピロリ菌感染によるものが90%以上を占めています。また世界的にもWHO(世界保健機構)の報告によればピロリ菌を原因とする胃がんは80%以上になります。ピロリ菌は強い酸性の胃の中でウレアーゼという酵素を出し、胃内にある尿酸をアンモニアと二酸化炭素に分解し、周りにアンモニアによるバリアを張って胃内に棲みつき、継続的に周りに炎症を起こします。
すると胃粘膜は傷つけられ、やがて胃粘膜の修復が追い付かなくなって萎縮してしまい、発がんリスクが高まることになります。また、萎縮した胃粘膜がさらに腸の粘膜細胞に置き換わってしまう腸上皮化生が起こるとさらに発がんリスクが高くなります。
こうした状態に、塩分の過剰摂取、喫煙習慣などが加わると、さらに胃がんのリスクは高まります。

胃がんの症状

胃がんはその初期はほとんど自覚症状がありません。また、進行した状態でも自覚症状が現れない人もいて、なかなか発見が難しいがんの一つです。進行して症状が現れた場合でも、胃痛、胃部不快感、胃もたれ、胸やけ、悪心(吐き気)、食欲低下など、他の胃腸疾患と同じような症状です。
がんからの出血で吐血や黒色便の血便などが出ることで、検査となり発見されることもあります。その段階に至る前に、少しでも胃の不調を感じたら、まずは消化器内科を受診してしっかりと検査を受けるようにしましょう。

胃がんの検査・診断

自覚症状のでない早期の胃がんであっても、胃カメラ検査で発見は可能です。当院では、内視鏡システムとして、オリンパス社の最新の最上位機種である「EVIS X1」を導入しております。この「EVIS X1」を使用し、狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)モードや構造色彩強調機能(TXI:Texture and Color Enhancement Imaging)で胃全体を観察することで、従来よりも胃がんを発見する精度が高くなりました。

5mmの早期胃がんです。白色光観察ではわかりづらい病変も、NBIモードでは周囲との色調の違いで病変を視認しやすくなります。また、当院でも導入している拡大内視鏡を併用して病変の血管模様や表面の構造を詳細に観察することで、分化型がんと未分化型がんの鑑別などリアルタイムに病変の診断と治療方針を決定することが可能となります。

当院では、日本消化器内視鏡学会が認定する内視鏡専門医・指導医である医師が、すべての内視鏡検査を行います。国内外で内視鏡の診断・治療、技術指導などを数多く経験してきた熟練の手技で内視鏡検査を行うことで、正確な診断が可能となります。また、鎮静剤を使ってウトウトと眠っているような状態で検査を受けていただくことが可能ですので、遠慮なくご相談ください。

胃がんの治療

早期のうちに発見することができれば、体に負担の少ない治療(内視鏡治療)で完治させることができます。ある程度進行している場合には、手術や化学療法が行われます。ピロリ菌に感染している場合は、胃がんの治療が落ち着いた時点でピロリ菌の除菌治療を行います。
除菌に成功すると、胃がんの再発率が1/2から1/3に下がるという報告もあります。しかしながら再発がゼロになるわけではないので、ピロリ菌の感染の有無に関わらず、治療後は定期的に胃カメラ検査を行い、経過を観察していくことが大切です。


監修:名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院 
院長 村元喬

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