便秘

長く続く便秘でお困りの方へ

健康な便は水分がおよそ80%程度含まれています。それ以上多いと軟便から下痢便になりますが、水分摂取量が少ない場合や腸で水分が吸収され過ぎるなどで水分含有量が減ると便は硬くなり、排便しにくくなるため便秘になります。
また便意を我慢することに慣れてしまうと、便が溜まっても便意を感じにくくり、便秘になります。食事をしたものが消化されて排便されるまで、一般的には24時間程度とされていますが、これには個人差があります。排便が毎日ない場合でも、排便時に強くいきんだりせずに便が出て、便が出た後はすっきりとして残便感がないような状態でしたら問題ありません。
便秘とは、排便の際に痛みや力まないと出ないといった何らかの障害がある、または便は出るけれども便が出た後も何となくすっきりせず残便感があるといった状態を指します。
便秘のきっかけは運動不足や食物繊維の不足といったことが多いのですが、中には治療が必要な胃腸の疾患が原因となっている便秘もあります。また、疾患が無い場合も、便秘によって便が長時間腸内に滞留することで、有毒物質などが発生しやすくなり、身体の不調を起こすこともあります。
調子が悪い時などに便秘気味なことはありますが、慢性的に続いていたり、下痢と便秘を繰り返したりといった症状がありましたら、一度医療機関にご相談してしっかりと治しておくことをお勧めします。

便秘の原因

便秘の起こるメカニズムとしては、便の水分不足か排便のための機能の低下が考えられます。便秘の種類は大きく分けて、他に疾患がなく腸の機能的な障害から起こる機能性便秘と、腸に疾患があることが原因で起こる器質性便秘に分けられます。
その他には糖尿病などの内分泌疾患や神経疾患といった全身疾患の症状として現れる症候性便秘や、薬剤の副作用で現れる薬剤性便秘などもあります。

機能性便秘

機能性便秘は、弛緩性便秘と痙攣性便秘、直腸性便秘に分けられます。

弛緩性便秘

大腸の運動機能が、何らかの理由によって低下して起こるのが弛緩性便秘です。ぜん動運動が低下することで、大腸内で便が停滞して、水分が過剰に吸収されてしまいます。そのため便は硬く太くなって、排泄が困難になります。
便が大腸内にずっと留まっていると、腸内細菌によって腐敗・発酵が進み、ガスや有毒物質が生まれやすくなり、お腹の症状の他に、肌荒れや各種機能の低下などの全身症状が出ることもあります。運動不足、水分補給不足、過度のダイエット、食物繊維の不足などが原因となっていることがほとんどです。

痙攣性便秘

ストレスや過労などによって自律神経のバランスが崩れ、副交感神経が過剰に働くことで腸管が緊張してしまいます。強くいきまないと排便できず、排便できても少量で、残便感があり、下腹部痛を覚えることもあります。便はウサギの糞のようにコロコロと小さく丸い形になります。
便秘と下痢を繰り返すタイプの便秘症の方に多く、過敏性腸症候群の便秘型、混合型の人もこの痙攣性便秘に当てはまります。

直腸性便秘

結腸をゆっくりと移動した便は、直腸へと入り一時的に溜められます。十分な量が溜まると、直腸の神経が働き便意を覚えます。便意を感じると脳は2種類ある肛門括約筋のうち、自律神経が支配する内肛門括約筋を緩め排便しようとします。
一方外肛門括約筋は随意筋で便意を感じても準備が整うまで便が漏れ出してしまわないよう、力を入れて肛門を締め付けます。忙しかったり、なかなかトイレに行けなかったりする状況で我慢をすることが習慣になると、だんだん、直腸で便が溜まっても、便意を感じなくなり、内肛門括約筋が緩まなくなってしまい、便秘になるのが直腸性便秘です。
便が溜まり過ぎると排便困難を起こすこともあります。高齢者などに多い便秘ですが、痔による痛みで便意を我慢する癖がついてしまうと直腸性便秘になることもあります。

器質性便秘

大腸がんや大腸ポリープが大きくなった場合、腸管が狭窄して便秘を起こすことがあります。また腹部手術後の癒着やクローン病などによる腸閉塞で便秘になることもあります。
普段便秘症ではない方が、突然便秘を起こしてそれが長く続く、激しい腹痛がある、血便がある、悪心・嘔吐を伴うといった場合、早急に治療する必要があります。また、器質性の便秘の場合は、便秘薬や下剤で無理に排便しようとすると、かえって悪化させてしまうこともありますので、しっかりと受診して原因を突き止めて、治療する必要があります。

便秘を伴う病気

大腸の疾患が便の通過を障害するために起こる器質性便秘の原因となるのは、腸閉塞、大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室症、潰瘍性大腸炎、クローン病などの他、女性の場合は骨盤臓器脱なども考えられます。
また、大腸以外の臓器や神経、内分泌系などの疾患によって起こる症候性便秘では、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、低カリウム血症、高カリウム血症といった代謝異常、神経損傷や糖尿病神経症などの神経系異常、うつ病、摂食障害などの精神系疾患などが考えられ、また女性の場合は子宮筋腫などが原因となる便秘もあります。
その他にも、痔と便秘は深い関係にあり、便秘による硬い便の排便によって裂肛が起こったり、痔の痛みによって排便を我慢することで直腸性便秘が起こったり悪循環に陥ることがあります。
また、痙攣性便秘と同様の仕組みを起こす過敏性腸症候群の便秘型、混合型も便秘を伴う疾患の代表的なものの一つです。こうした便秘を伴う疾患は、放置することで重篤化してしまう危険性もあり、しっかりと原因を突き止めて、治療する必要があります。
また、機能性便秘の場合もたかが便秘と侮っていると、腸内に滞留した便が発酵・腐敗してガスによる苦痛や有毒物質による全身への悪影響も考えられます。市販の便秘薬を飲む前に、専門医の診察を受けて便秘が起きている原因を突き止め、根本から治しておくことが大切です。

便秘の検査と診断

問診でいつ頃から、どのような症状で便秘が起こっているかなどの排便状況についてだけではなく、その他の身体状況、既往症、服用している薬剤など、便秘に影響のありそうな事柄について詳しくお伺いします。恥ずかしがらず正確に、詳細にお話いただくことで原因を突き止めることができます。
その上で、腹部の聴診と触診を行います。検査としては、血液検査や腹部超音波検査、腹部X線検査などで、腸や周辺臓器、血管などの状態を確認します。さらに必要に応じて大腸カメラ検査を行い、腸粘膜の状態、ポリープやがんなどの病変の有無、狭窄の有無を確認します。
大腸カメラ検査では、ポリープがあればその場で切除することもでき、疑わしい病変はサンプルを採取して病理検査を行い確定診断に結び付けることもできます。当院では、内視鏡専門医・指導医の資格を持つ臨床経験の豊富な医師が、最新で最上位の内視鏡システムを駆使して、丁寧でありながら迅速かつ正確な検査で、患者様の負担を可能な限り軽減した検査を行っております。安心してご相談ください。

便秘の治療

器質性の便秘や症候性の便秘の場合は、その原因となっている疾患の治療を行います。また薬物性の場合は、服用している薬の処方を変更が可能かどうか検討します。機能性の便秘の場合は薬物療法と生活習慣の改善によって治療を行います。

薬物療法

便秘の薬には、下剤だけでも多くの種類があります。それは、便に作用して水分を増やしたり、便量を増やしたりするもの、大腸のぜん動運動に作用するもの、小腸に作用して水分量を増やすものなどです。
また、補助的に腸内フローラを整える作用のあるものなどもあり、さらに漢方薬も効果的なものもあります。患者様それぞれで異なる便秘のタイプや生活スタイルに合わせて、それらのうちどれを処方するかを決めていきます。また、再診時には薬の効き目などをお訊きして、薬の量を調節したり、変更したりするなど、きめ細かい対処をしていきます。

生活習慣の見直し

便秘に関連する、食生活、不規則な生活習慣、無理なダイエットなどの要因を解決しないまま薬を止めるとすぐに再発してしまいます。これまでの生活習慣などについてお訊きした情報から、どのような食事が適しているか、どのような運動をしたら良いかなどを指導し、また無理のないダイエット法や正しい排便習慣などについてのアドバイスも行います。気になること、わからないことなどがありましたら、どんなことでもお気軽にご相談ください。


監修:名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院 
院長 村元喬

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