「お腹が空かない」という症状は誰にでも起こり得る症状ですが、長期間続く場合や他の症状と併発する場合は、心配になられる方も多いかと思います。消化器で異常が生じているとお腹が空かないことはよくあります。今回はお腹が空かないときに考える病気について解説していきます。
お腹が空かなくなる病気とは?
消化器系疾患
胃炎
胃の粘膜上で炎症が生じると胃炎が発生します。胃炎はヘリコバクター・ピロリ菌の感染や過剰なアルコール摂取、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用などが原因となります。胃炎が発症していると食欲不振(お腹が空かない)や胃の不快感を引き起こします。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が傷つき、粘膜上で潰瘍ができることで食欲不振を引き起こしてしまいます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍もピロリ菌の感染やNSAIDsの使用が主な原因となります。これらの潰瘍は、空腹時に痛みを感じることが多く、食欲が減退してしまいます。
胃がん
胃がんは、病状が進行するにつれて食欲不振を引き起こすことがあります。早期の段階では症状がほとんど感じないことが多いですが、病状が進行していくと胃の不快感や体重減少、食事の摂取が難しくなることがあります。胃がんだけではなく、大腸がんなどの他のがん(悪性腫瘍)でも食欲不振は同様にみられます。
腎不全
腎機能が低下していくと、体内の老廃物が適切に排出されなくなってしまいます。その結果として、食欲不振や悪心、疲労感が生じることがあります。
内分泌系疾患
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌量が減ることで、新陳代謝系に異常が生じてしまい、食欲不振を引き起こすことがあります。その他の症状としては、疲労感、寒気、体重増加などがみられます。
糖尿病
高血糖状態が慢性的に続いていると、食欲不振や体重減少を引き起こすことがあります。糖尿病は、多飲多尿、疲労感、視力低下などの症状も伴うことがあります。
精神疾患
うつ病
うつ病は、食欲不振や体重減少を引き起こすことがあります。無気力感、興味や喜びの喪失、不眠などの症状もみられます。食欲の変動はうつ病の一般的な症状の一つです。
摂食障害
摂食障害には、拒食症や過食症があります。これらの疾患は、食事に対する異常な行動や考え方を引き起こし、食欲不振や異常な食事習慣を伴います。
感染症
慢性肝炎
慢性肝炎は肝炎ウイルスによる感染症で、肝臓の機能が低下することで食欲不振が生じます。慢性肝炎は、倦怠感、黄疸、腹痛などの症状も伴うことがあります。
結核
結核は、主に肺に影響を与える感染症ですが、食欲不振や体重減少を引き起こすことがあります。持続する咳、発熱、夜間の発汗などの症状がみられます。
その他の原因
薬物の副作用
一部の薬物は食欲不振を引き起こすことがあります。抗うつ薬、抗生物質、化学療法薬などがその代表例です。薬による副作用で食欲不振がみられる場合は薬の変更や調整が必要となります。
お腹が空かない際の対策について
早期診断と治療の開始
食欲不振が慢性的に続く場合は、早めに消化器内科を標榜しているクリニックで診察を受けることが重要です。診察を受けて必要に応じて検査を受けていただき、食欲不振が生じている根本的な原因の有無を特定するようにしてください。
バランスの良い食事
栄養バランスの取れた食事を心掛けましょう。食事が進まない場合は、少量でもいいので食べるようにしてください。消化に良い食べ物を選ぶようにし、無理なく食事で栄養補給することが大切です。
生活習慣の見直し
食欲不振の際は規則正しい生活リズムを保つことも重要です。十分な睡眠を取り、いつも通り決まった時間に食事をして、適度な運動を行うようにしてください。
ストレス管理
ストレスが原因となって食欲不振が生じていることもあります。抱えているストレスを発散できるように趣味の時間を大切にしたり、お風呂に浸かるなど日常生活も工夫をしてみてください。
医師との相談
生じている食欲不振は、治療目的で飲んでいる薬の副作用が原因となっている可能性があります。かかりつけの医師と相談して薬の変更や調整を検討することが必要です。
最後に
何となくお腹が空かない時は、皆さんも一度は経験したことがあるかと思いますが、普段の日常生活が原因となることもあれば、胃がんや胃潰瘍などの病気が原因となっている可能性があります。早期の診断と適切な治療を受けることで、症状の改善が期待されます。
当院では消化器内視鏡指導医の資格を持っている院長が、消化器専門外来を行っています。消化器内視鏡指導は日本でも数少ない消化器領域のプロフェッショナルです。
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